バスの中のあんたに

明日は、ライブです。





GOING STEADYの峯田が、「セッチューフリーというイベントの千葉さんが俺たちを救ってくれた」みたいなことを言ってるのを、中学生の俺は読んでて、誰そいつと思ってた。
時は流れ、それから10年なんて簡単に経ち、俺はバンドを始めて、俺はセッチューフリーに出てた。何があるかわかんないね。




ボイガルが始まった2011年3月。とにかくライブをやりまくらないとダメだと思って、やりまくった。どんなにお金がなかろうが、時間がなかろうが、ライブやらないとダメだと思ってた。
そしてその年の夏の真ん中くらいかな。セッチューフリーの北海道ツアーがあること知る。もちろん、呼ばれてないし、見に行こうと思っていた。すると、ある人から連絡がきた。

「セッチューフリーの千葉くんが、オープニングアクトのバンドを探してて、ボイガルを紹介しようと思うんだけど、9/20大丈夫？」という電話だった。

その人は昔から千葉さんとの知り合いだったらしく、俺はその人とはボイガル始めてから出会ってて、正直少し謎めいた人だなあと思っていた。でもまさか、千葉さんと繋がってるなんて知らなかった。

もちろんです と俺は答えた。

当日、ライブハウスに行くと、もともと俺が大ファンだったキンゴンズ、セックスマシーン、四星球、人性補欠、黄金クリムゾンがいた。みんな、オーラが違った。
千葉さんがどの人かもわからなくて、ライブハウスの人に聞いた。
初めましてと言うと、あ、初めましてよろしくお願いします、と言われた。

俺たちのことなんてそりゃ興味ないだろうなあ と思った。


でも俺はそんなことどうでもよくて、千葉さんに気に入られたいなんて今まで1秒も思ったことはないし、もちろんこの時もそうだった。対バンの人たちと仲良くなりたいなんて全く思わなかった。とにかく、やるしかなかった。それしかなかった。俺たちの持ち時間は20分。やるしかなかった。


大好きなLINKというバンドがセッチューフリーによく出てたのは知っていた。でもLINKの活動は止まっていて、でも、前年2010年9月にクラブチッタ川崎で開催されたセッチューフリーサマーフェスタというでかいやつで復活したのも知ってた。
そして俺たちがオープニングで出た9/20の三日後の9/23にクラブチッタ川崎で行われるセッチューフリーサマーフェスタ2011にも、LINKが出るのは知ってた。

俺は出れなくて、見にもいけなくて、それが悔しくて、その20分のライブの中、初めてのセッチューフリーで俺は、「来年の今頃は、俺たちはクラブチッタ川崎だ」と言っていた。自分で言ったMCの中でも、これはめちゃめちゃ覚えてる。

その年の11月、人生で初めて東京にいった。初めての東京ライブ。セッチューフリーだった。これは千葉さんから連絡が来た。初めて千葉さんからセッチューフリーに誘われた。初めての東京ライブは、またオープニングアクトで、また持ち時間20分だった。ふざけんなと思った。場所は高円寺HIGHというとこだった。

やるしかなかった。9/20と同様、やるしかなかった。
その時は初めての東京ってことで、「新宿雪虫高円寺」という5曲入りのデモを作って持っていった。結構売れた。札幌帰ってきてからも少し売ったけど、200枚くらいで廃盤にした気がする。



話は戻って、その東京ライブがキッカケとなって俺たちは北海道を飛び出してライブをする回数が増えた。セッチューフリーにたまに乗っかりながら。

翌年の9月北海道をセッチューフリーで回った。「ああ、1年前は最終日の札幌でO.Aだったなあ。今年は普通に混ざって回れんのかあ」なんて考えてた。

んで、その年のセッチューフリーサマーフェスタ2012に俺たちは出た。
嬉しかったけど、当たり前のことだった。これは1年前にステージの上で決まってたことだったから。とか偉そうに思ってた。




ボイガル史上もっとも最悪だったライブもセッチューフリーの時だった。

セッチューフリーに、ほんとに色んなことを教わったし、セッチューフリーは色んな景色に出会わせてくれた。





俺たちはメジャーデビューすることになった。もう間もなく。わくわくする。俺はメジャーリーガーになる。

メジャーデビュー前最後のライブが、札幌で、しかもセッチューフリーで、出番は最後だ。ここまで物語が繋がるなんて、あの日の20分のライブの時は…ていうかあの中学生のときに峯田の言葉を見た日には思ってもいなかった。


そして明日は「ロックンロールが降ってきた日3」という本の発売日だ。その峯田の名前と俺の名前が並ぶのも明日だ。

たった一人のためだけのストーリーを信じてきてよかった。

これは、1年前のセッチューフリーロードトゥサマーフェスタのときの写真。俺たちは2年連続でトリだ。去年なんて余裕で越えてやる。

明日の30分、盛大にやろう。
歌いたい歌はたくさんあるけれど、優しい気持ちで選んで決めて、とにかく楽しく笑って、高らかに歌おう。