夢が終わる前に



先ほど札幌スクールオブミュージックにて学園祭に出演してきた。

一つのライブが創り出されるのに色んな人が関わるってのは、ライブハウスに普段行かない人でも何となく、何となくわかるはず。
演者がいて、その場所の人がいて、イベントをやろうと動き出した人がいて、スタッフがいて音響さんがいて照明さんがいて、受付の人がいて、タイムテーブルを作る人がいて。お客さんがいて。それらはその時々によって変わってはくるけど、とにかく色んな人がいるってのはわかると思う。




今日は関係者、すべてが、学生だった。



学校に着くと、生徒スタッフ達が迎えてくれた。
控え室に案内してくれる。学祭なのに。バリバリ仕事してる。学祭って、あれ、どんなだっけ。彼ら彼女ら、バリバリ仕事してる。そう、やるしかないのだ。彼らは。彼女らは。

リハーサルのため、ホールへ案内される。たくさんのスタッフの子達がいる。そこには、先日医療大の九十九祭の時にステージスタッフとして手伝ってくれていた子がいて、「あれ、この前の」と言ったら、あの日バイトで入ってましてと教えてくれた。そうか、みんなそれぞれの場所に戦いに行っているんだ。その子が今日はモニタースピーカーのPA(音響)をしてくれた。(ステージ上の僕らの足下にある、僕らの方に向いて置いてるスピーカーのこと。あれ大事なんす。)



ちょっと前に、「PAと照明用に、セットリストの音源と歌詞を送ってください」と学校側から頼まれていた。だけど、9割方のライブで当日にならないとセットリストを決めれない僕は、困っていた。その出番までの流れだったり感情の変化だったりで、歌いたい歌は変わってしまうからいつも当日にならないと決めれないのだ。でも、今回はちょっと話が違う。オペレーションをするのは学生である。進めてくれるのは学生である。音響やってみたいなとか、照明やってみたいなとか、そやって自分の夢だったりやってみたいなと思ったことに、勇気を出して足を踏み込んだ自分はめっちゃ最高だって思ってもらえないと、僕はプロじゃない。その為には事前に送って、照明さんなんか特にリハーサルまでに照明卓いじって、曲に合う色作りをして臨んだりするのだ。僕も経験者だから、わかる。だから、遅れてしまったけど、なんとか数日前にセットリスト決めて音源も送った。よし、これでいこうと。

んで今日学校着いた時、僕の感情はあっさりと覆り、1曲増やそうと決めた。減らすならまだしも、増やした。ただ、もし「ダメです無理です」って言われたら、元々送ってるセットリストでやろうとも思っていた。
リハーサルの為にホールに入ってセッティング。まず僕は照明卓にいった。女の子がいる。今日の照明さんですか?と聞くと、不安そうな声で「はい」と答えてくれた。めっちゃ不安そうだった。僕はそれを一蹴し、「すみません、1曲増やしたいんですけどいいですか?」と聞いた。その照明さんは、「……あ。…あの、、……」と。顔面蒼白、唖然として無言。そりゃそうだ、無理もない。ただでさえ送られてきてるセットリストはたった何日か前に届いててそれで手一杯なはずなんだ。
後ろに立っていた先輩のような方の顔を見て「どうしましょう」と無言のアイコンタクト。多分その先輩のようなかたも、え…って思ってた。

でも僕は、その照明の子を見て、「どうですか?」と押した。それは共に戦いたかった。戦ってほしかった。戦えると、なぜか思ったからである。

先輩のような方は「他の曲用に作ってる色があるから、それで、できる、よね、、?」と、もうこう言うしかないという具合で照明の子に言う。照明の子は、「はい」としか言えず、二人は許諾してくれた。強引である。


でも僕は、彼女と戦いたかったし、最初のコンタクトで不安に押し潰されそうな彼女を見た時に「きっといいものになる」という確信があった。


リハーサルで、「すいません、1曲増やすことになりました、それやってみます」と言って、僕らはリハーサルでその歌をやった。
照明の彼女は僕が渡したA4の歌詞カードを見ながら、初めて聞くであろう僕らの生演奏に必死にくらいついてきてる。フロアにはお客さんがいないから、それがよく見えた。だがしかし、いかんせん、いきなり増やされた歌、くらいついてみても、ついてこれなくて当たり前である。音とタイミングは中々あっていない。

でも僕はその時に必死にくらいついてる彼女を見て、また確信したのだ。「絶対にいいものになる」と。ほんとに。
リハーサルでその歌は結局1回だけ(しかも最後までやらないで途中でやめた)。さあ、あとは本番だ。

リハーサルが終わって僕は彼女に、「とにかく楽しんでやってもらえたら嬉しい。何色がついたっていいので。楽しんでください」と言った。
彼女は「はい」と、小さい小さい声で泣きそうな顔で僕に言った。


さて本番だ。
その歌を歌う時がきた。
僕は涙が出そうになった。

天井からおりてくる灯りは、僕の歌と、僕らの音楽に必死に寄り添って灯されていた。でもそれはリハーサルの必死さじゃなく、本番の、いいものにしたいっていう必死さ。僕は何度も天井を見た。DからAにギターのコードが戻る時、赤から青へ。緑から白へ。ぴったりだ。白からオレンジへ。うん、ぴったりだ。

メインのPAの子も、モニターのPAの子も、きっと必死になってくれていた。僕が好き勝手にフロアにおりたりして、その度にマイクケーブルをさばいてくれた子たちも。映像のカメラを回してた子たちも、カメラ回しながらグータッチしてくれた。

そして、フロアにはお客さんがいて、一生懸命僕らを見てる。



きっといつかまた一緒に仕事をしよう。
全員は無理かもしれない。そもそも仕事なんて、大げさかもしれない。でも、音楽のもとで、クリエイティブな渦の中で、そして人間味溢れる熱量のど真ん中で、再会したい。そう強く思ったし、そんなことを何故かお客さんに伝えたくなった。お客さんからしたら、「そんなん知るか!」って話かもしれないけども。でもほんとなんです、お客さんの前だからこそ、言えたことだし思えたことだし言うべきことだったんです。


全てがおわって、お客さんがフロアからいなくなって、僕は照明卓へ。彼女に「ありがとう」と言って、握手を求めた。彼女はコクリと頷いて、僕に右手を出してくる。握った手は、全くと言っていいほど力なんて入ってなくて、少し冷たかった。ありがとう、本当にありがとう、戦ってくれてありがとう。心から思った。

今日、僕は彼女にだけ無茶な注文をしまくった。でも、どうしても忘れられない日にさせたかった。どんなに嫌がられようが失敗しようがなんだろうが、僕は今日という日に僕らの照明をやったという「学生」のあの子の中で、今日という日が何かになってほしかった。そしてそれの感情は、気づいたら全員に思ってた。他のスタッフの子にも、もちろんお客さんにも、先生方にも。








僕らのこの先の道なんて、まっすぐじゃないし一本じゃない。ふとした時に分かれ道はやってきて、ふとした時に交差点に出くわす。
それでも今日の日のことを、そんな分岐点でこそ思い出し、笑うことができるようなら、きっと美しい。
ここまで何か色々あった、そしてきっとこれからもそうだ。そんな時に思い出すのはきっと、君のこと、あいつのこと、あの夜のことだ。




今日は、Tシャツに、僕らTHE BOYS&GIRLSができるキッカケになったバンドの曲の一節からとって「夢が終わる前に」と書いた。
そのバンドはもう解散した。昔、「学園祭でこの歌やるのが夢なんだ」なんてメンバーの人が言っていたのを思い出して、その曲の歌詞を書いた。

帰るとき、スタッフやってくれてたひとりが、「Tシャツもらえませんか?」と言ってきた。最初は断ったんだけど、「MC聞いて、頑張ろうって思いました」と言われて、あげた。その子の頑張ろうがどんな方向に行くかはわからないけど、夢が何かはわからないけど、いつか夢が終わってしまう前に一歩踏み出せる勇気になるのならと思い、あげた。

ボロボロ泣きながら、これからの自分のことを話してくれたスタッフの子もいた。小指の爪くらいの大きさの涙をずーっと流しながら話してくれた。東京に仕事が決まったらしい。んじゃ、次はきっと東京で会えるときが来るねと言うと、がんばびばずーと泣きながら言っていた。多分、頑張りますと言ったんだろう。その子は、数年前、体験入学でライブしてる僕らを見てたと教えてくれた。物語は繋がる。












僕にとって今日という日は、やっぱりとても意味のある日でした。今からまた頑張っていこうと強く思えたし。





今日という日に関わったすべてのあなたに感謝します。





コメント

  1. 私も夢があって今年から専門学校で勉強をしています。この選択が合っていたのか間違っていたのか、分からないですが、絶対に夢を叶えたいです。
    大げさかも知れませんが、THE BOYS&GIRLSに出会えたおかげで世界がかわりました。フウコさんの存在も知ることができて、刺激を受けまくっています。私も芯の強い人になりたいと思いました。
    いつかいつかいつかはTHE BOYS&GIRLSを撮影できるようなカメラマンになります。

    いつもありがとうございます。

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    1. 知さん→
      夢を叶えたいと思っているのなら、今の選択が間違ってるか正解かなんて考えなくてよいさ。僕は出会いだったり出会い方だったりタイミングだったり色んなことを重視するから、誰でも撮ってくださいってタイプではないけど、いつかそれらがうまく重なったらその時は来るかもしれませんね。僕も頑張ります。

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