僕は走り出したんだ

10月。手帳を買いにいかないと。

1日
BiSHとのツーマン、どうなるかなって思ってて。色んなバンドマンや関係者から、やれBiSHやばいとか、やれBiSHと対バン羨ましいなとか言われていて。あまりにも言われるもんで、なんだか悔しくて。ワタナベシンゴ特有のアマノジャキズム発生。単純に僕はBiSHが好きだったけど、ツーマンとなるとヘラヘラしてられん。彼女たちはフェスにも出てるしきっと僕らなんかより有名で人気なバンドとも共演してる。やってやらぁって意気込んでた。どんな場所でも、何度もライブしてる街でも、どんなイベントでも、誰と共演でも、僕らはいつものようにその日の僕らでステージに上がる。それだけ、だった。会場に入ると、ステージに6人。初めまして。イケメン0人、ボーカルは汗っかきで髪薄くて、ギターとベースとドラムは太ってます、僕たちがボイガルです。
僕らのリハーサル、BiSHのメンバーの方達がそれぞれ散り散りになり、見てくれていた。
僕らのリハが終わって、BiSHと一緒に、アンコールの練習を一度だけ。
そうそう、アンコールでコラボしませんかと言われていて。僕らの曲をBiSHが踊ったりするってのと、「BiSH-星が瞬く夜に-」をボイガル演奏でやるっていう２つ。所謂「アイドル」とこんなことするのは初めてで、ましてや会ったことも話したこともないのに大丈夫かなと最初思いつつ、僕はワクワクしていた。
僕らの曲は、ライク・ア・ローリング・ソングで提出した。この曲なら盛り上がるかなとかそんなんじゃなく、これは、BiSHに向けての宣戦布告と、感謝と、ここで君と歌ってたってことが10/1のすべてだって思いを伝えたくて、この歌にした。もうずいぶん前に作った歌だけど、僕は勝手に、この日にぴったりな歌だと思っていたから。
星が瞬く夜にをやる時は、セントチヒロ・チッチさんの「星が瞬く夜にー！！」という合図で曲を始めるという流れに決まった。

オープン前まで時間があったから、僕はしばらくステージで声出しを兼ねて色んな歌を歌っていた。

ライブはあっという間に終わった。お客さんたちに救われながら、あっという間に終わった。楽屋に戻るときに「シンゴー！シンゴー！」と、BiSHのお客さんたちが叫んでくれていた。あんなの初めてで、嬉しかった。僕は、GOING STEADYとか銀杏BOYZとかがライブしたときに「ミネター！ムライー！！」と男たちが必死に叫んでいる光景に憧れていたから、なんだか一つ夢が叶った気がした。BiSHのライブもあっという間に終わった。かっこよかったし、闘っていた。アンコールで僕らを呼び込んでくれて、僕らはステージに上がる。ライク・ア・ローリング・ソングを演奏、BiSHが踊って煽ってくれて。僕はいてもたってもいられなくて、思わず、ダイブしてしまった。
ライクが終わって、次はBiSHの曲を。リハーサル通りチッチさんの「星が瞬く夜にー！！」の合図で演奏スタートしようとしたら、チッチさんは「ボイガルと瞬く夜にー！！」と言って、それでスタートした。あれすごいグッときたなあ。
今まで経験したことのない景色だったり気持ちだったりを教えてくれたBiSHと、BiSHのお客さんと、僕らのお客さんに、やっぱり心からの感謝です。イベントがすべて終わり、少しメンバーのみんなと談笑して、その日は別れた。


2日
前日と同じベッシーホルでBiSHワンマンがあって、僕はワンマンも見に行った。映画のようだった。また、川崎で。そう楽屋で軽く挨拶をして、僕は家に帰った。


3日
FM NORTH WAVEで新番組「RADIO GROOVE」が始まった。一人で番組を持つのはもちろん初めてで、楽しみで楽しみで仕方なかったけど、同じくらい、不安で不安で仕方なかった。この数ヶ月、打ち合わせに打ち合わせを重ねてきた。思いも共有できているし、スタッフ陣は心強い。だけども僕は、まだまだだ。期待に応えたい。期待されたい。期待を裏切りたくない。予想を裏切りたい。力になりたい。ひとりにしたい。ひとりにさせたくない。バンドマン、ワタナベシンゴ。ギター持ってなくても、ステージじゃなくても、全部がきっと繋がって全部がきっと大切だ。もう始まっている、涙はグッとこらえた。


4日
BiSHとベランパレードの新譜が店着日だったので買いに行った。エスカレーター上がってまっすぐBiSHを手にし、ベランパレード探したらなくて諦めて、レジに向かったらレジ横にハイスタの新譜が置いてあってハイスタも買った。
夜はラジグル２回目だった。放送後に一時間くらい反省会して、ひとり帰り道。札幌駅北口から構内に入り、地下歩行空間へ降りてひたすらまっすぐ。「新番組なかなか長丁場だな。ハイスタかけてくれてありがとう。楽しかったよ、お疲れ様」と、先輩からメールがいきなり届いた。絶望なんかさしてる暇があるなら欲望と笑ってようぜ、確かその人はそんな歌を歌う人だった。帰り道、買ったばかりのCD聞きながら、そのメール読みながら、僕はまた涙をグッとこらえた。僕も誰かの、力になりたい。


今日は、ベランパレードが札幌来てて、ライブ見れないからリハーサルめがけて会いに行ってきて、一緒にカレーを食べて、アルバムのコメントを渡して、さっきバイバイした。
「アルバム嬉しいね、おめでとう」というと、ギターのこうたが、「これからです、ようやく。」と言っていた。


ベランとバイバイして、札幌の街をひとり歩いている時、不思議な気持ちに気づいた。
この街をひとりで歩いている時にこんな気持ちになるなんて、初めてかもしれない。
それは、うまく言葉で説明できないんだけど、なんだか僕は幸せな気持ちになっていた。

きっと、もうじき雨が降る。
あの日もそうだった。
晴れが続いて街中でも星が綺麗に見えた次の日は、雨が降っていた。














僕は決めた。
真夜中の汚い部屋で、僕は決めた。

決めた。