ホタテ

今年もライジングサンロックフェスティバルに出れなくて、去年に引き続き「最低な一日」を過ごした。

14時半過ぎに、幌平橋駅に着いた。改札を出るとあの謎の壁画。今日も相変わらず独特な雰囲気を醸し出してるねと壁画の少年少女に心の中で語りかけて、1番出口から外に出た。雨は降っていない、が、完全に降りそうな色をしてた。やばそう。そんな気がした。

去年と同じ場所に向かう。
幌平橋駅から10分くらい川沿いを北上したところ。もう、めちゃめちゃにアクセスが悪いところ。コンビニも近くにないし。自分でもなぜあそこなのか意味がわからないが、とりあえず今年も去年と同じ場所にした。幌平橋を左に曲がるとすぐのところに女の子二人がいた。「こんにちは」と言われたから「こんにちわ。最低な一日?」と聞くと、「はい」と言っていた。「おお、ありがとう」と言って三人で歩いた。よく考えたら、「最低な一日?」「はい」という会話意味わかんねえな。一人はカメラを持っていて、「撮ってもいいですか?」と聞いてきたので、いいよと答えた。二人は札幌のバンドが好きで、ライブハウスで出会ったと言っていた気がする。そんなこんなで目的の場所に着くと、すでに一人男の子が座っていた。「最低な一日?」と聞くと、「はい」と言っていた。意味わかんない何この会話。
最初に待っていたその男の子は旭川から来ていた。ライジングのチケットが取れず、休みは取れて、札幌にきたという。「友達はビアガーデンに行ったので、僕はこっちに来ました」と言っていた。ビアガーデンいけよ。彼は学生時代、陸上で1500mをやっていたらしく、センゴという名前に勝手にした。センゴは「コンビニ全然ないですね、、、なんか買ってくればよかった」と嘆いていたので、僕のビールをあげた。喜んでいたが、スマホのケースはマイヘアだったから、マイナス1500ポイントだ。

そして15時15分くらいに僕たちは気づいた。

「やることがない。」

持ってきたパソコンからとりあえずの音楽。ギター持ってきたけど、ライブするってほどでもないし。でもまあ、そもそも今日最低な一日だからいいか。みんな開き直っていた。少しの笑いがあればいいかって、そんな感じだった。

ゆっくりと、だんだんと、不思議と人が集まる。みんな、とても言葉では言い表せない顔つきでくるもんだから面白かった。「最低な一日ですか?」「はい」という流れが必須みたいになってて、はいと答えるとみんなで拍手して出迎えた。来た方は突然のぬるっとした歓迎ムードに一瞬ひるみ、次の瞬間にはみんな自分の世界に戻っちゃうという劇的な世界を目の当たりにして、「え、あ、ん?なんじゃこりゃ」と抜け出せなくなる。僕を含む6人からスタートした今年の最低な一日は、最終的に37人ほどになった。
お菓子だったり飲み物とかを自分の分だけじゃなく買ってきてくれた人とかもいて、バドミントンのラケットや羽や、グローブやボールを持ってきてくれた人もいて、もちろんほとんどの人たちが知らない人なんだけど「食べてください飲んでくださいキャッチボールしてくださいバドミントンしてください」という感じで、みんなで食べたり飲んだりした。本当に、すごく時間がゆっくり流れてて、ただ、風に吹かれて川の方に向かって座って、誰かが持ってきたグローブとボールでキャッチボールしたり。今頃ライジング、誰々がライブしてる頃かなとか言って、少し歌ったり。食べたり。飲んだり。

最初はみんな、さすがに、様子見ながらというか、僕がなんか動くの見てる待ってるって感じだったけど、きっとみんな途中からはっきりと「こいつもう動きたくないんだな」って気づいてた。絶対ばれてた。だって僕がウロウロしてる間にさっきまで話してなかった知らない人同士が一緒にお菓子食べてたり、知らない女の子同士がキャッチボールしてたり、そんな光景が広がっていたんだもん。でも、それが本当によかった。すごい盛り上がってるわけじゃなくて、そこに変な絆なんてなくて、ただなんとなくそうなっているという感じで、それが本当によかった。「俺、最低だなあ」って何度も思った。

途中から来た女の子二人組が、「シンゴさん、物販めっちゃ並びましたサインください」と意味不明なこと言い出して、わざわざ無地のTシャツ買ってきてて。無理やり物販作らされてすごい面白かった。喜んでサインしたもん。その子たちなんか色々持ってきてて、「通し券のリストバンドってこれですよね?」ってなんか袋から取り出して。なんか、あれなんて言うんだろう、ちっちゃいボンボンみたいなのがついた髪止めるやつみたいな。なんか、開けた袋止めれるみたいなやつ。うまく言えないけどそれを二つつなげて手首につけて、リストバンドに見立てて。フェスって、あるのよね、そういう立派なリストバンドが。こっちは、それで。君たちぶっ飛んでるねえなんていいながら、僕も手首につけてもらった。そしたらみんな「リストバンドください」ってなって、その二人がみんなにつけてた。みんな欲しがるもんだから一人に二つあげてたら全然足りなくなって、一人一つにして手首じゃなくて指につけてあげてた。そういう発想とか、僕にはきっと生まれないから、なんかみんなすげーなーって思った。二人は自分の手首につけてたやつも分解してみんなにあげていた。

空が、暗くなってきた。
少しずつ、帰る人も出てきた。

僕は、ギターを持って、歌を歌った。それまでちょくちょくセンゴのために10-FEETを歌ったりマイヘア歌ったりしてたけど、さすがに歌いたくなる。
「拝啓、エンドレス様」の話や、一炊の夢についての話を、酔っ払ったついでに話して、エンドレス様の収録曲の弾き語りトレーラーライブをした。みんな、じっと最後まで聞いてくれた。1曲目の「一炊の夢」から11曲目の「ただの一日」まで一回も休むことなくつなぎまくって、ノンストップでの20分。じっと最後まで聞いてくれた。いい歌が多かった。

気づけば21時、6時間が経っていて真っ暗で、帰ろうかってなって、一本締めをした。でも結局一本締めしてから1時間くらいそこにいたから全然意味わかんない、一本締めの意味全然なかった。22時になって、いよいよ本当に解散。何事もなかったかのように、それぞれの場所にそれぞれの帰り方で帰る。友達でも知り合いでもない、ただ、最低な一日を過ごした者同士、全員ため息つきまくりで帰る。最低だったな、最低な一日だったよなと。





一年じゃ、何も変わらなかった。でもこの一年は、僕にとって大切な一年だった。
来年の今頃、どこでどんな一日を過ごせるかなんてわからないけど、いつの日かライジングの会場で君が君のために笑えるように、僕は頑張ろうと思う。スケッチブックに書かれた、最低な一日にきた人たちの言葉を見て、そんなことを思った。

その日が来るまで、今年の通し券のリストバンドは、大切にとっておく。


(撮影:こうじさん)


拝啓、エンドレス様。
もうすぐ、夏が始まります。

コメント

  1. 聴くだけで聴くだけで突き刺さるうーたーと枯れるまで流れ行く河
    Make a wish、、、石狩川、土器川近く、椹野川近くでもライブ見たいなー

    エンドレスサマーはじまりますね。ボイガルとともに過ごすエンサマになります。楽しみに待ってます。
    こっちは気合い入りまくりなので、ココロシテカカッテラッシャイ❗

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  2. タイトルがホタテなのが気になります。笑

    いつか連れて行ってくださいね(^^)

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    1. いつになるかわからないけれど、必ず。

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