札幌のバンド、ライブハウス、ジェットサンダース。

6月24日を迎えるにあたって、今まで何千何万と話したり言ったり書いたりしてきたことを、改めてもう一度書かないと気持ちが壊れてしまいそうなので、書く。そして、これを記すのはこの投稿で最後にする。


2007年の春に札幌に出てきた俺は、その年のライジングサンロックフェスティバルに行き人生で初めて「ライブ」というものを体験した。そこで、生のライブってやばすぎってことに気づいて、その年の9月、ゼップ札幌にthe pillowsを見に行く。人生で二度目のライブだったはずだ。その日のピロウズはトリプルアンコールがあったけど当時の俺はアンコールとかそういうことの概念がほぼなかったので、アンコールはすればするほど出てきてくれると思っていたため特に驚かなかった。バカだな。

そしてその年の、確か12月。俺は人生で初めて、札幌のライブハウスに行く。(その頃ゼップがライブハウスだったとは知らなかった(ゼップはゼップだった)ので、人生初のライブハウスはこの12月の日に認定している)

場所は、札幌KLUB COUNTER ACTIONだった。


きっかけは、りゅうただ。
りゅうたとは、専門学校に入ってからできた友達で、俺にできた初めてのバンドメンバーだ。りゅうたの部屋は南7条西20丁目あたりのファミリーマートの近くにあって、その頃よく二人でファミマで色々買って、りゅうたの部屋で音楽を聴いたりしていた。りゅうたは、俺の持っていないものをなんでも持っていた。キングのビデオも、LINKのDVDも、黄色いギターも。そんなりゅうたの携帯は、いつも同じ着うたが流れていた。

「消えないで
行かないで
夜はまだ始まったばかり」

りゅうたの携帯はいつもそう歌っていた。それは誰の歌だと聞くと、「ジェットサンダースっていう、札幌の最強のバンドだよ」と言っていた。当時札幌のバンドなんて全く興味がなかった(ピロウズとKEMURIしか聴いてなかった時期だった)ので、「ふーん」という感じだった。

そしてその時はやってくる。
りゅうたが俺に、「シンゴ、明日カウンターアクションっていうライブハウスに行こう。」と言ってきたのだ。その頃の俺は9月のピロウズの余韻抜けぬまま、「ライブはやっぱゼップとかっしょ」みたいな気持ちでしかなかったので、「やだ」と言った。あと実は普通にゼップ以外のライブハウスがどんな感じなのか知らなかったし、ブレーメン読んでたせいでそこら中でセックスや喧嘩が繰り広げられてたり何もしてないのに平気で警察が来て連れていかれたりとかがあると思ってて、怖かった。本当にそう思っていたから、嫌だった。ゼップ行きたかった。
りゅうたは続けて、「いや、行こう。シンゴの人生が変わる」と言う。俺はその後押しに負け、恐る恐るりゅうたに着いて行った。
りゅうたに、どんなバンドが出るんだ?と聞くと、「今日はジェットサンダース主催のアクメナイトってイベントだ。スパイボーイとボーイズドントクライもやばいぞ」と教えてくれた。だがしかし、りゅうたがどんなに熱弁しようと、特段ワクワクしたりはしなかった。

カウンターアクションの階段をのぼり、りゅうたと店内に入る。暗い。たばこの煙がすごい。音が大きい。パンクスぽい人達がいる。派手な女の人がいる。髪ツンツンの人がいる。革ジャンの人たくさんいる。

「やっぱブレーメンじゃん」

そう思いながらりゅうたに「どこで見ればいいの?」と聞いた。するとりゅうたは、「どこで見てもいいんだよ、曲知らなくてもいいんだよ」と教えてくれた。それが救いだった。

そして、りゅうたが言っていたBOYS DON'T CRYというバンドが始まって、そのやばさにぶち抜かれた。やばすぎた。何がやばかったかというと、わからない。1秒もこのバンドのこと知らないのに、やばすぎた。ボーカルの人やばい何だこの人って思った。のちに俺は、そのボーカルの人と、街でばったり会ったら2人でカツ丼を食べに行くという仲になった。

そしてスパイボーイというバンドが出てきた。やばすぎた。ファンタジーがなんとかかんとかっていいながら、爆音で高速でガチャガチャで、ギターの人ずっと転げ回って叫んでる。何この人達。何なんだこれは。俺はいま何を見てるんだ。最後はギターの人が壁を使ってバク宙みたいなことして、足引きずって楽屋に帰って行った、めっちゃペコペコしながら。なんなんだ…

そこで俺は、気づいてしまった。
「いま確実に、俺の人生が変わり始めている。」と。


最後に、ジェットサンダースが出てきた。開始1秒で、俺の中のすべてが塗りかえられた音がした。こわかった。叫んで、爆音で、ボーカルの人は目の周りは黒くて髪が緑で、マイクで頭ゴンゴンして、目をこんなに開いてこっちを見て、身動きが取れなくなる感覚。俺の知らないロックンロールがそこにはあって、それは俺が知りたかったロックンロールだったような気がした。

鳥肌がずっとたってる。足が震えてる。
最後にジェットサンダースが、というかボーカルのしっぱいまんが「夜はまだ始まったばかりだよなァ!?」と叫んでいた。その夜とは、俺のロックンロールのことだったんだろうか。俺のライブハウス人生のことだったんだろうか。なんにせよ、俺のためにジェットサンダースがいるような気がして、嬉しかった。
そのまま最後の曲に入ったジェットサンダース、しっぱいまんが「消えないで、行かないで、夜はまだ始まったばかり」と歌う。りゅうたの携帯じゃなく、目の前でジェットが、しっぱいまんが歌ってる。胸が苦しくなった。

それから俺は札幌のライブハウスに行くようになって、札幌のバンドを見るようになった。ゼップやペニーレーンもいいけど、この街のライブハウスに出るこの街のバンドを知りたくて見たくて通った。毎度毎度感動した。会場の広さじゃなく、お客さんの数じゃなく、タイムリーな感情と誰にも知られないけどどこにも負けない感動があった。

街でしっぱいまんを見かけたとき、声をかけて握手をしてもらった。ボイガルをやる前、1人でやった自主企画に出てもらった。ジェットがパワスレのB2スタジオでいつも練習してたから、俺たちもパワスレのB2スタジオを使うようになった。しっぱいまんがライブドアブログだったから、俺もライブドアブログから始めた。

気づけば、話したりできるようになって、俺はボイガルを始めて遂にジェットと対バンできる日がきた。忘れもしない、アクメナイトだ。その日俺は初めてカウンターアクションのステージに立った。あの日のカウンターアクションから何年だ、俺はステージに立った。しかもジェットサンダースに呼ばれたアクメナイトだ。
初めてのジェットサンダースとの対バン。
初めてのアクメナイト。
初めてのカウンターアクション。
どんなライブだったかは覚えていないが、あの日のことはべったりと今もくっついたままだ。


それからジェットは東京に行った。しっぱいまんは東京に行く前に、ずっと乗っていた自転車をくれた。ボイガルの「すべてはここから」のMVで俺が乗ってるやつがそうだ。大切に乗っていたが、寿命のせいかチェーンが切れてしまい、マンションの横に置いておいたらある日なくなってしまった。今頃どうしてるのだろうか。



時は流れ、先日、ジェットサンダースの活動休止が発表された。しっぱいまんから電話が来た時、純粋にさみしかった。俺は、「そうなんですね」としか言えなかった。「札幌でアクメナイトやりたいんだ、ボイガル出てほしいんだ」としっぱいまんはいつもの口調で俺に言う。俺は、出たいですと答えた。しっぱいまんは、ありがとうあははーと、いつもの口調で俺に笑う。




あの日、俺をカウンターアクションに連れて行ってくれたりゅうたに感謝する。そして、この街で俺がバンドをやるきっかけをくれたジェットサンダースに勝手に感謝する。

24日の日曜日、カウンターアクションで、アクメナイト。活動休止だからまだ望みはあるかもしれないがそんなことに甘えず、ジェットサンダースとやるのはこの日が最後だろうという気持ちでやる。札幌に住んでるバンドとして、誇りに思う。

ゼップとか、ペニーレーンとか、いつもソールドアウトするようなライブに行くのが多いって人にこそ来て欲しい。どんな形であれ、なんじゃこりゃって気持ちを知りたい人にも。


ライブハウスは怖いところだ。
それを今度は俺が提示する。
夜を終わらせに行く。


コメント

  1. つい最近、卒論のために図書館で本を探していたら「ロックンロールが降ってきた日」という本に出会いました。その中の1冊にシンゴさんの名前があって、3冊とも全部読みました。
    シンゴさんのロックンロールが降ってきた日はこの日で、今もロックンロールが降り続いているんだろうなって思うと、この本の続きが見れているようで嬉しいです!
    今日、最高に熱い素敵な夜になりますように。
    いつか北海道にボイガルを見に行きますね☺︎

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    1. あの本、すごいですよね。見つけてくれてありがとう。物語はどこまでも続いて行きます、卒論ファイトですよ。

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