後にも先にも今はない

土砂降りの雨の音がとんでもなく心地よく感じる日は、あくびがよく出る。集中して、もう少し頑張ろう。平凡な毎日だけど、変わり映えしない日々だけど、ほんの少しの衝動もワクワクも大切にしていよう。誰になんて言われたって、最初に思ったのはどんな時も自分だし、最後に決めるのも自分だ。





8月16日、札幌SPIRITUAL LOUNGE、鈴木実貴子ズとツーマン。僕は弾き語り。
前日、僕は鈴木実貴子ズのドラムのいさみさんに久しぶりにメールをした。明日見に行けないけど頑張ってください的な当たり障りのないメール。鈴木実貴子ズは翌日のライジングサンロックフェスティバルにトップバッターで出演が決まっていた。
いさみさんから「何もかも初めてだけど、ライブはライブなので大丈夫かと思います!」と返ってきていた。それとほぼ同タイミングでライジングサンロックフェスティバルの初日16日の中止が発表された。いさみさんも、ほぼその時に知ったぽかった。台風。アーティストやたくさんのお客さんのことを考えての中止、こればかりは仕方ないなと思う。ただ、それでも実貴子ズはライブしなきゃダメなバンドなのも知っていた。しなきゃダメというか、するしかないのだ。一般公募で選ばれた初日トップバッター、どうなってもライブ。僕はライジングに出演予定のアーティストではなかったので、ただシンプルに、何かやりたいのなら僕が間に入ることもできるかもと思っていさみさんに「何かお考えですか」と聞くと同時に数カ所への連絡を始めた。場所や時間、実貴子ズの意図や気持ち、全てがいい感じにハマるのが一番いい。やり取りをして、最終的に夜にスピリチュアルラウンジで僕は弾き語りでの出演だけどツーマンをすることになった。そこから諸々詳細はスピリチュアルの新保さんとものすごいピッチで進めた。

実はこの時、ズーカラデルにも連絡をしていた。北海道の大切な友達だ、彼らもライジングが中止になった組。これは僕の独断。先のことなど何にも考えていない。実貴子ズとズーカラ見れるの最高じゃんってだけだった。ボーカルのノブに、「こうこうこうで、こことここは空いていて、」みたいなことをとりあえず送っていた。ノブから「ありがとう、ちょっと会議して折り返す」ときた。
新保さんともリアルタイムで色々報告しつつ、「タイトルどうする?」と言われたので「Another def.でお願いします」と言っていた。実貴子ズもズーカラも、def garageというステージだったから。

ちょっとしてからノブから電話がきた。めちゃくちゃ省略するけど、ノブは僕に、
「僕たちはライブハウスでやるのはやめようと言う結論になった。もちろん何かはしたい。ただ今回はライブハウスはやめようとなった。めちゃくちゃ3人で話し合った。ごめん、ありがとう。」と言っていた。気持ちがバキバキに伝わってくる電話で最高だった。実貴子ズが大好きだというノブの気持ちもバッキバキに伝わってきて最高だった。

新保さんにズーカラのことを話した。新保さんは「素敵だね。実貴子ズもズーカラも。」と言っていたな。本当にその通り。そして新保さんは「もしかしたら、ライジングに出演する予定でまだ札幌にいて、ライブがしたいバンドがいるのでは」と言っていた。確かにと思って僕はタイムテーブルを調べてみた。実貴子ズとズーカラの間にネクライトーキーがいた。そういう風にできている。ネクライトーキーのツイッターを見るとキャンペーンがあってノースウェーブでラジオに出ていた。いる、札幌に。新保さんに連絡して、「ネクライトーキーいます多分!なんとか連絡してみます!」と伝えた。
それを知った以上、どう思われてもいいや、って感じだった。僕の連絡先に入っていて、尚且つネクライトーキーのメンバーさんの連絡先を知ってそうな人にダーっと連絡をした。マイアミパーティのジオくんから最初に返事が来て、僕はネクライトーキーの朝日さんの連絡先をゲットした。会ったことも話したこともない。僕はただただ長ったらしい面倒くさそうなメッセージを送った。数分後、電話がきた。「ネクライトーキーの朝日です」と電話の向こうが言った。

「あの…ありがとうございます。なんていうかあの、あ、初めまして朝日と申します。あの、めちゃめちゃ考えて話し合いました。ライブ、はい、すごくやっぱりしたいです。……はい。でも、あの。」と言う。もう、その時点でなんていうか、伝わってきた。ノブ同様、本当にたくさん考えてる人の話し方。
僕はそれだけでなんだか涙が出そうになった。「朝日さん、大丈夫です、ありがとうございます」と伝えた。悔しさとかバンドへの思いとお客さんとかスタッフと運営のウエスとかへの思いが、溢れまくってた。「動くのも最高なバンドで、ただ、動かないってのもバンドなんだと僕は気づきました」と、言葉を選ぶように、詰まりながら、噛み締めながら言っていた。その電話だけで僕はこの人好きだなと思った。ズーカラのノブも、朝日さんも、本当に本当に素敵だった。

「電話じゃなきゃきっと伝わらないと思って」と、二人とも言っていた。
偶然なんかじゃないな。
今思うと、こんなに気持ちの詰まった3バンドが連続するライジング初日のデフガレージ、絶対最高だったろうなって思った。

そして新保さんにネクライトーキーのことを伝えた。「みんな素敵だな」と思わず僕らは笑っていたもんだ。そのタイミングでいよいよ「よし、鈴木実貴子ズとワタナベシンゴのツーマンで行こう」となった。タイトルは「突然のツーマン」に変えた。defはもう関係ない。
実貴子ズは、本来の出演予定時刻の14時からLOGでワンマンをやると言うのを先に発表していたので、それを追ってこちらも発表した。そっちは、LOGのスタッフでもあり奥山漂流歌劇団のリーダーでもある奥山京ことちんぽこお兄さんがナイスだったらしい。これが札幌のやり方だ、現場は現場の者同士で最速で決めて最速で繋げていく。さて、こちらもとことんやろう。

ライブのことは、まあいいか。あれはきっと、伝説の夜だったように思う。
とにかく僕は、あのバンドが大好きである。汗がずっと止まらなかった。
今しかないのだ。そんなライブを目撃できたこと、ともに楽屋を共有できたことを本当に誇らしく思う。140人、スピリチュアルにあんなに人が入ったのを僕は初めて見た。僕が歌った歌は全て、こんな日が来ることをわかっていたかのような歌ばかりで、歌を作ってきてよかったと思った我ながら。
実貴子ズのライブが終わり、みっちゃんは僕に「ズッ友な。」と言ってきた。望むところだ。ちなみにいさみさんとはそういう話を今まで一度もしていないけど、いさみさんとも友達と思っています僕は!!

ライブが終わり、片付けて、またね〜!と僕らは別れた。雨が弱くなっていた。






ライジングは17日は無事に開催され、僕は豊平川で「最低な一日」を過ごした。
暮れていく静かな夏だった。トモヤさんが来てくれたりして嬉しかったな。
高校一年生の女の子が友達と来てくれていた。その子はギターを練習していてあいみょんの曲を弾けるようになりたいと言っていた。じゃ一緒にやろうと提案して、少し離れたところで二人で練習してからみんなに披露した。ぎこちないコードチェンジと右手のストロークでかき鳴らしたあいみょんの曲、それを聞いてるそこに居合わせた人々、落ちていく太陽と、カラスの鳴き声。僕らのロックフェスだった。
僕は家に帰り、最低な一日はもう今年で最後にしようと決めた。
たとえこの先ライジングに出れなくても、最低な一日はやらないことに決めた。


いい二日間だった。本当に。
力をもらってばかりだ。



撮影はな
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コメント

  1. 突然のツーマン、シンゴさんと皆さんの気持ちが詰まってて素敵でした
    今年、最低な一日にどうしても行けなくて。来年行けるかなと思ってたけど、やっぱりシンゴさんにはライジングに連れて行ってほしくて。
    とにかく応援してます!

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    1. ありがとうございます、突然のツーマンは本当に僕にとっても大切な日になりました。

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