表紙に選ばれなくたって

新型コロナウイルスの影響により、5月から8月にかけて予定していた全13公演の全国ワンマンツアーは中止になった。アルバム「大切にしたいこと」は4月29日から7月1日に発売延期となった。そしてどこにもいけなくなった僕らは、8月から新たに、無観客そして生配信で全国ツアーというものをやってみた。すべて札幌からの配信で、中止になった箇所をそれぞれサブテーマとして設けて13公演の無観客生配信のワンマンライブ。


とある日は「福岡ー!」と叫び、またある日は「仙台ー!」などと叫び。でも、冗談抜きで本当にその場所のことだけ思いながらその場所だけのライブができたのは、THE BOYS&GIRLSというバンドのこれまでの軌跡にそれ相当の力があったからだと思う。関わってくれた全ての人に、心の底から感謝している。


2021年1月1日、新曲「サンキューマイレディオ」を、配信限定リリースすることになった。今年の7月から9月の3ヶ月間、北海道のAIR-G'で「FM ROCK KIDS」という番組をやらせていただき、その期間で作った曲。このコロナ禍、ラジオという存在が僕にとって間違いなく大きかった。イベントがなくなり、チケットは払い戻され、フェスも中止、CD屋さんもライブハウスもなくなっていった。そして、嫌われていった。それでも何かを発信できるなら、楽しみたかったし楽しんでほしかった。ロックキッズの中で、「フェス」をやることにした。

フェスのタイトル、出店ブース、出演アーティストなどをリスナーの皆さんと考え、1ヶ月かけて創り上げてその月の最後の週で決まったアーティストの曲をどんどん流していくという、ラジオの中でやる架空のフェス。9月、最後のフェスのときに、僕はこの「サンキューマイレディオ」という曲を書いていった。

「大切にしたいこと」というアルバムで駆け抜けてきた2020年だったけれど、サンキューマイレディオは間違いなく今年を象徴する曲になったし、来年の始まりにもぴったりだと思っている。是非聴いてください、そして、あなたがよく聞くラジオ局や番組があれば、どんどんリクエストしてみてください。配信開始を待たずとも、もう今からリクエストしてみてください。誰かの真夜中を切り裂いてくれるといいなと思ってます。




そして、2021年6月19日土曜日、僕の生まれ育った町・北海道中標津町で、野外フェス「SHIRUBE 2021」開催決定。今年めちゃくちゃ中標津のこと考えた。小さい町だから、やばいんじゃないかなって。月並な言葉だけど、元気なくなってっちゃうんじゃないかなって。だからといって、自分に何かできるってわけでもないしって。

でも、音楽があるって。


中標津は、町中にライブハウスがない。大きいCD屋さんもない。ライブってものに触れる機会が、中標津にいるだけじゃ限りなく少ない。車持ってれば別かな、父さん母さんが音楽好きだったら別かな、でも、中学生や高校生は簡単に釧路すら行けない。17年前、YouTubeもなければ携帯もないし、ウォークマンとかも持ってなかった。ラジカセのコードぎりぎりまで引っ張ってラジカセと一緒に押し入れに入って、その暗い押し入れの中から画鋲で戸に穴を開けると星みたいになって綺麗で、そこでイヤホンしてCD再生させて、そこが僕にとってはライブハウスだった。そこでイメージしてたのがライブだった。今そんなことしてる人いるかなあ、いるといいな。


あの町に、音楽を走らせる。空港前の広場。あそこしかない。あそこならやれる。そう思ってしまったのだ。

ボイガルを始めて次の3月で10年が経つ。中標津にボイガルのことを知ってる人なんて、両手があれば数えれるくらいなのもわかってる。現に、このSHIRUBE 2021を進めるにあたり町の人たちに直接話をしてみても、ほぼ皆さんが、ボイガルはもちろん、僕のことも知らない。だけど、やる。だからこそ、やる。その方が燃える。ゼロから始めるのは昔から苦じゃない。「今までそんなのないから無理じゃないか?」ってことでも、やってみないとわからないからやる。この人の力を借りたいと思った人には、全力でぶつかる。嘘のような本当をやりたい。他のフェスと比べてどうこうとかそういうのじゃなくて、生きてくための標を立てていたい。未来に標を立てていたいだけだ。そして悩んで、壊して、また作って、最後は笑ってたいだけだ。


中学生の頃、卒業アルバムとは別にその年度末に生徒全員に配られる文集があった。「標」というタイトルだった。3年生が美術の授業で最後の取り組みとしてそれぞれが好きに描く絵の中から、「標」の表紙は決まる。僕は1年生の頃からずっとそれを狙っていた。3年生になったら絶対表紙をとるぞと。中学生の頃、GOING STEADY(voの峯田和伸さんは現銀杏BOYZ)というバンドがすべてだった僕は、「若者たち」という曲からのインスピレーションで、ナイフを持った左手を真ん中に描き“未来を 切り拓け”という絵の作成に没頭した。結局、こうじゃない!こうじゃない!と何度も描き直しているうちに締め切りまでに出せず、無論、表紙には選ばれなかった。今となってはいい思い出だけど、標の表紙に選ばれたい!というのが、あの頃ぼくのひとつの「標」だった。


きっとそんなふうに、だれにでも、あるような気がしている。側から見れば鼻で笑われるような、罵られるような、見向きもされないような、だけどその人にとってはそれが大事な標だったんだってことが。


このSHIRUBE 2021も、同じだ。あの頃僕が目指していた表紙と何ら変わらない。ここを目指して、日々をこぼさないように、生き続けていたい。

THE BOYS&GIRLSを始めてから、茶の間のテレビに流れるものが、すべてじゃないことを知った。ガラガラのライブハウスで歌い続けるロックバンドが、冗談抜きに人生を変えてくれた。そして、茶の間のテレビに流れるもののかっこよさも知った。YouTubeの再生回数がすべてじゃないことを知った。音質の悪い全然再生されてないライブ動画に何十回と泣いた。そして、何万回と再生されてるのにはちゃんと理由があることも知った。


つまり、どこにだって何にだって、誰かの心に突き刺さってキッカケになる可能性があるってことだ。


どんなに時代が変わろうと、きっとあの頃の自分のようなやつが今も絶対にいること、諦めたくない。

ドントトラストオーバーサーティー!大人の言うことなんか聞いてたまるかって叫んでたあの頃の自分を感動させれるくらい、かっこいいとこ見せたい。職種も、世代も、時代も飛び越えて、人口2万3千人のあの町に、音楽と食と自然と可能性を。本気の文化祭だ。



シルベクルーという名で、いわゆるボランティアスタッフを募集してます。基本中標津で月1ミーティングに参加できるのが理想、活動内容はそのミーティング内で決まったこと。話してみないとわかんないことがあるっていうのは、めちゃくちゃワクワクする。


Twitter、HP、YouTube、開設してます。

少しずつ、でも、あと半年しかないからスピードは速いほうがいい、拡めてほしいです。そして、半年後中標津で会えたらなって思ってます。僕は僕にやれること、少ないかもしれないけど、とにかく探してやってみます。

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