ゴーストレート

6月から始まり、月に1~2本くらいのペースでゆっくり回っている「YOUR CANVAS TOUR 2022」、月が変わってしまったけれど、先月広島公演と神戸公演があった。

思い出すだけで、疲れてしまうような、そんな二日間だった。



18日、夜の便で俺たちは関西空港へ。
少し遅れた飛行機は、23時半くらいに着陸。そこで、東京から走ってきていた機材車に乗り込む。ツネさんとつじとPAのりんくんが待っていた。そこから車で約5時間、広島のホテルに着いたのは朝の5時くらいで、シャワーを浴びてすぐに寝た。

朝起きてカーテンを開けて、会場へ向けて出発。
車の中で智也さんの「手をつなごう」が流れた。つじが、智也さんのライブの時のように「まだサビじゃないですよ〜」と真似をしていた。

車の窓から見えた海が綺麗で、頭の中で「ウルトラマリン」が流れる。
「そうだ、今日はハルカミライとか」なんて思った。




YOUR CANVAS TOUR 2022、3本目、広島SIX ONE Live STARという初めての会場。
初めてだけど初めてじゃないというか、いや、完全に初めてなんだけどなんだか不思議な気持ちだった。
2020年、3枚目のアルバム「大切にしたいこと」をリリースして、ボイガルは全国ワンマンツアー「少年少女の星屑」を決めていた。広島も入っていて会場はBACK BEATというライブハウス、何度かお世話になっていた。しかし、コロナで星屑ツアーは中止、無観客生配信の全国ワンマンツアー「少年少女の灯火」に切り替えた。
灯火ツアーは、【中止になった星屑ツアーの全箇所分のワンマンを札幌から生配信でやり、終演後は会場の店長さんたちとリモートでアフタートークをする】というものだった。
広島BACK BEAT編も勿論あって、しっかりライブをした後、店長の藤堂さんとリモートでお話をした。「いつかまたバックビートに来てくださいね、待っています」と藤堂さんは言っていた。

2021年、シングル「town to town」のツアーで、改めて広島はBACK BEATを押さえた。ようやくバックビートに行ける。そう思っていた。しかし運命の悪戯か、バックビートは公演直前で閉店が決まった。そこまでドラマチックにしなくていいのにね。
バックビート閉店により急遽会場はバンキッシュ。あの日、PAはバックビートの金子さん、照明はバックビート店長の藤堂さんだった。その時に、「新しいライブハウスを始めます」という話を聞いた。

そして、今回のSIX ONE Live STARに繋がる。
ようやく、本当にようやく、と言った感じだった。2年越しだ。
そんなストーリーを面白がってくれるだろうと思って、ハルカミライを誘った。受けてくれて嬉しかった。

新しくて綺麗で、真っ赤なシックスワン。
久しぶりに会った藤堂さんは最初に「こんな感じになりました」と笑っていた。めっちゃいいですねと、俺は返した。誰もいないフロアで二人で少し話をした。
「ここはこうで、こうだから、こうしているんです」と、細部のこだわりも教えてくれた。ぎりぎりまで頑張ったんだろう。そして「まだ正確には完成ではないんです」みたいなことを言っていた。今年の1月に始まったばかりだもん、これからどんどんカッコ良くなっていくんだ。

いいライブができた。
初めて見てくれる人がきっと多かったと思うけど、少なからず何かしらを受け取ってもらえたんじゃないかなと、そんな気はした。
綺麗な思い出だけではないけど、ハルカミライとの夜はいつも胸が熱くなるよ。
男は去り際が肝心だ。「じゃあ、明日もお互い頑張ろう」と、あっさり別れた。


翌朝、ホテルを出て歩いていると、木に大きな蝉の抜け殻が止まっていた。でか、、、と思っていると前から歩いてきた女の子が俺に気づいて、「シンゴさんですか?昨日行きました!」と声をかけてくれた。もしかしたら、蝉の抜け殻の写真を撮っているところを見られた可能性がある。恥ずかしい。ありがとう恥ずかしい。広島ずっと暑かったな。夏が来て僕等って感じだな。


神戸に移動して、太陽と虎へ。8月20日、対バンは初共演のヒグチアイ。
アイちゃんの音楽に出会ったのはもう何年も前で、俺はただのファンだった。アイちゃんのライブを見たのは一度だけ、2017年8月に札幌でインストアライブがあった時のみ。
当時俺はノースウェーブでMCを担当している番組があって、そのインストアの翌日だかに局で会った。「昨日ヒグチアイさんのインストア見たんですがめちゃ良かったです」とディレクターに話すと、このあと来るよと教えてもらい、挨拶だけした。
「昨日見ました、良かったです。」というと、「ありがとうございます。どこで私を知ったんですか?」言われたのを覚えてる。「初めて聴いた曲は、“まっすぐ”で、あの歌が始まりです。」と言うと、「へえ、そうなんだあ」と言っていた。

あの日から、5年が経っていた。
その間、共演は無し。俺は相変わらずのリスナーに戻った。
そしてこの2年くらい、ヒグチアイが放つ音楽に何度も何度もパワーをもらい、時にぶん殴られ、そして掬われてきた。

ツアーのミーティングをしている時「ヒグチアイさんを誘いたい」と俺は断固曲げなかった。
出るって言うまで誘い続けるくらいの気持ちでいた。と言いつつ、最初はほぼ諦めていた。おそらく、今のアイちゃんがうちのツアーに出るメリットは、ない。自虐的且つ悲観的な言い方になってしまうけど、悲しいかなそれはほぼ間違いない。
そんなある日「ヒグチアイさん、出てくれるそうです・・・」とつじから連絡があって、「・・・え、なんで?」となった。こっちから誘っておいて、俺は悪い男である。

ライブ当日、アイちゃんは、「なんで誘ってくれたんだろうってずっと考えていた」と言っていた。俺も同じように、なんで受けてくれたんだろうとずっと考えていた。
上にも書いたように、共演歴なしで5年ぶりの再会と会話がツーマンだなんて、おかしな話である。

でも、アイちゃんの道と俺の道が、こんなところで並んだのである。
これはロックンロール、本物の夜だった。見てくれた人がきっと一番わかってくれてるはずだ。


オープン直前に、アイちゃんとフロアで話をした。
「こういう“ザ・ライブハウス”でのライブは、もう何年もしていない」と言っていた。アイちゃんは、子供みたいになんでも聞く俺の質問に、丁寧に答えてくれた。
さらっと「一曲、一緒に歌わない?」と聞くと、アイちゃんはさらっと「いいよ」と言った。「何歌う?」と言われたので、「まっすぐがいい」と俺は答えた。「え〜しばらく歌ってない〜」と笑っていたが、アイちゃんは「まっすぐね」と言ってなんとなく口ずさみ始めた。
俺は持ってたギターをなんとなく弾いてアイちゃんが口ずさむ歌に乗せて、なんとなく最後までいって、なんとなく「よし」となった。リハーサルらしいリハーサルは無し。一番アイちゃん、二番俺、最後ふたりということだけ決めた。

普段、自分らのアンコールを前もって誰かと打ち合わせして決めたりしないから、少し恥ずかしかったけど、嬉しかった。


結局、アイちゃんにすべて持っていかれたな。
でも終わったあと、メンバーもスタッフも音泉の田口さんも太虎の風次さんも、アイちゃんもアイちゃんのマネージャーさんも、みんな笑ってたから、それでいいやとなった。それだけでいいのだ。

そもそも、ボイガルのライブが良かったのである。
あんな気持ちになるとは思わなかった。



もしもまた会える日が来たら、何話そうかなあとか考えながら、アイちゃんチームの車を見送った。






この二日間ギターを弾いてくれたてぺ兄が、「最高だよ。もっと良くなるよ絶対」とボソッと俺に言ったのが、今もやけに胸に残っている。


対バンシリーズ、控えてるバンドは、
KALMA
ジュウ
ビレッジマンズストア
の3組。

そしてワンマンが
中標津ティコティコ
高松MONSTER
大阪ESPエンタテインメントCLUB GARDEN
札幌PENY LANE 24
そしてファイナル、恵比寿リキッドルーム。

一人でも多くの人に、届いていくといいなと思っています。



ボイガル史上最大で最愛、最初で最後のユアキャンバスツアー。

「遠いストーリー、僕はこれからどんな絵を描いていくのだろう」です。

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