夢の続き
最後にこのブログを更新したのが1年以上前。ほんとに、なあにやってんだかって感じで。
周りでTwitterが流行り始めた15年くらい前、「俺は呟かない、叫ぶ」とか意味わかんないこと言って、アカウントも作らず逆張りでブログを書きまくっていた。
楽しかったし、たくさん打てるし、性に合っていた。
だのに、あっさり乗り換え成功しちゃって大事にしていたブログも露骨に更新が止まる。
絶対こっちの方があっているのにな。
でも、この一年のあいだ、何度も開いてはいた。
書いては消してを繰り返していた。
何件か残っている下書きには、『微笑むあなたは言いました』というタイトルのものがある。
途中まで打ってる文を読んで、その内容にある光景が鮮明に思い出された。十代の子達とのとある日の思い出だった。「夢に小さいとか大きいとか、目標に近いとか遠いとか、走ってるときはわからないし、わからなくていいものなんだろうな」とかを感じたことを思い出した。
さて、
これまでの俺は、『バンドでRISING SUN ROCK FESTIVALに出演すること』が一番の目標であり、夢だった。自分でチケットを買って行った初めてのライブが、ライジングだったからだ。2007年の夏だった。
それまでの18年間、イヤホンの中、雑誌やビデオやDVDの中にしかいなかったアーティストたちが、ようやく目の前に現れた。ずっと涙が止まらなかった。
2011年、THE BOYS&GIRLSを4人で始めた年、俺は二度目のライジングに遊びに行った。3年前とは、気持ちが全然違った。朝になり大トリは大好きなハナレグミ。大好きな『光と影』を演奏しているのを聴きながら、「なんかもういいや」と思った。
「もうライジングいいや」と思った。
「ボイガル呼ばれるまでもう来なくていいや」と思った。
「それまでもう来ちゃダメだ」と思った。
「いつかきっと呼ばれる日が来るんだ」と思った。
「ここで演奏するんだ」と思った。
「だからもう呼ばれるまで来ちゃだめだ」と思った。
俺の中でライジングは、そういうものになっていた。
今年の春先、いつものように地方遠征だった、とある日。
飛行機が着陸して機内モードを解除すると、マネージャーから「降りたらすぐ電話ください」とメッセージが来ていた。何かあったんだろうかと心配に思い、飛行機を降りて手荷物が流れてくるところで電話をした。
「もしもし、どうしたの?」と聞くと、「ライジング決まった!!」とマネージャーが言った。
まだ手荷物が流れてくる前、他の乗客の皆さんも荷物が流れてくるのを待っていた。
その場はかなり静かだった。
俺は「え?」と言いながら壁の方に移動し、電話の向こうで「ライジング!ボイガル決まった!!」と確かに言っているマネージャーの言葉に、「そっか、よかった」と声を殺して返していた。
一緒になって大喜びしたいところだったが、周りはめちゃくちゃ静かだし、手荷物流れてこないし、「そっか」しか言えなかった。マネージャーは最後に「第一弾でボイガルも発表だって」と言っていた。「そっか」しか言えなかった。
流れてきた荷物を取って、メンバーたちと電車のホームに向かってる時に、
「なんか、ライジング決まったらしい」とカズマとミカドとポルノに伝えた。
3人は「え〜マジすか」と言っていた。
俺も淡々と言ったもんだから、いつも通りの彼らの相槌が心地よかった。
カズマとポルノは一服してから宿に向かうと言っていたので、ミカドと2人で先に宿に向かった。
ミカドがボソっと、
「ライジング、代打とかじゃないんですね。やりましたね。」と言った。
俺は「そうだな」と返した。
その日の夜、宿の近くにあった居酒屋にひとりで入り、6000円近く使った。
8月15日、みんなで車で会場に向かった。
言葉も気持ちも思い出も全部吹き飛んでしまうんじゃないかってくらい風が強くて、
立っているのに必死だった。
それでも、同じ札幌の『でかくてまるい。』のライブに文字通り背中を押された俺は、いつものようにTシャツの首元を切り、マッキーを持った。
ライブ直前、運営スタッフの皆さんが、ゾロゾロとやってくる。
舞台チーム、電源チーム、美術チーム、制作チーム、ラジオチーム、ウエスチーム。
みんなして、
「シンゴ時間押すなよ」
「怪我すんなよ」
「物壊すなよ」
「喋りすぎるなよ」
「セットリスト本番中に変えるなよ」
と言う。俺が「わかってますって!何年やってると思ってるんですか!」と言うたびに、みんなは笑っていた。そういや、今まで何回も何回もそうやってきて、その度に怒られてきたな。
SEが鳴って、ステージに上がり、気づいたらライブが終わっていた。
あれは一体、なんだったんだろうか。
確かにそこには待っててくれた人がいて、仲間がいて、支えてくれる人たちがいて、自分の音楽があって、夢の場所があった。
でも、あまりにも一瞬で通り過ぎていって、自分が何をどんなふうに歌ったかとか、言葉にしたかとか、どんな動きをしていたかとか、全く思い出せなかった。というか今もちゃんと思い出せてはいない。
もちろん、泣いたり笑ったり叫んだりのお客さんの顔は見えているんだけど、そこにあった一つ一つの欠片がちゃんと手元に残っていない感覚だった。
ライブが終わって、ステージを降りるとみんなが待っていた。
「よーし、仕事戻るか〜」とみんな散り散りになっていった。
そのみんなの姿は、はっきり覚えている。
ずっと嬉しかったのは事実だ。
ライブが終わってひと段落して、ひとり会場をフラフラと歩いた。
この会場の中に、あの日の俺と同じように、今日が人生で初めてのライブって人がいるのかなあとか思いながら。もっというと、その始まりが俺たちのライブだった人とかいるのかなあとか。いるわけないか。
アーティストエリアに戻ると、メンバースタッフみんな既にジンギスカン食べたりお酒を飲んだりしていた。ボイガル初めてのライジングで、俺不在でも関係なしで始めちゃってるみんなの顔が、妙に嬉しかった。
この日の締めは、怒髪天の増子さんが呼んでくれて、EZOISTのボーカルで参加させてもらった。ボーカルは増子さん、元the pillowsのさわおさん。ギターとドラムは怒髪天の友康さんと坂さん。ベースはGLAYのJIROさん。キーボードに高野勲さんという、とんでもないバンドメンバー。そこにNOT WONKのかっと、ズーカラデルのノブ、中野ミホちゃん、と俺の北海道出身の4人が混ぜてもらった。
東京でリハに入った時、「中学の時G&Lのベースをてっちゃんって友達が買って、みんなで“ジローじゃん!”とか言ってたんです。」ってJIROさんに話すと、「シルバーのやつか、懐かしいな」って笑ってくれた。
高野さんは、ローディーでいたQ太郎さんが「シンゴこの人はやべえぞ」って紹介してくれた時も「そんなことないない」ってめちゃくちゃ優しい顔で笑ってた。
増子さんと友康さんと坂さんも言わずもがな。
さわおさんには、当日会場でようやく初めましてできて、話せるだけ話したいこと話した。
話し足りなかった。
あのEZOISTの時こそ、夢みたいな時間だった。
ずっと追いかけていた人たちと、自分が目標にしていた場所で、同じバンドをやるなんて、さすがに想像していなかった。俺だけ飲みすぎのはしゃぎすぎだったけど、お前みたいなやつが1人くらいいたほうがいいって増子さんもさわおさんも言ってくれたから、いいもんね。
ただ、飲んで歌って楽しかったとは言え、今回EZOISTに参加できて増子さんたちがライジングや北海道に対して思っていることを近くで感じれたことは、何にも変え難い物だし、これを札幌在住の自分がこれからどういう風に大切にしていくかはめっちゃ重要だなとも勝手に思った。この場を借りて、EZOISTのみなさんも見てくれた方も本当にありがとうございます。
気づけば、あれから14年が経っていた。
14年経った先に待っていたのは、あまりに駆け足で過ぎていく初めての夏だった。
で、ライジングは、本当は夢でも目標でもなかったんだなと、今になって気づく。
2007年のあの日、自分で買った通し券から始まった物語。
2011年のあの日、自分で始めたバンドを重ねたところから始まった物語。
強くなるために、きっかけになるために、始めるために、気づくために、手を伸ばすために、笑うために、心にまっすぐになるために、次のページに行くために、振り返れるために、自分の人生の中にライジングが登場してくれたんだと思う。
夢とか目標というよりは、いろんな人の顔が浮かぶものだ。
そして、そんな人に、いつか自分の歌がきっかけで面白いことが起きたり想像もしていなかったような場所にたどり着くことができたりするといいなと思う。
当分は、それが夢だ。
またあの場所で歌うことが決まったら、もっともっと、まっすぐに歌いたい。
ここまで打って、5時間くらいかかってる。バカみたいほんとに。
時間かかった割に、めちゃくちゃな読みにくい文で、すみません。
さて、ギアを入れ替えないと。
Zepp Spporoでの初ワンマンまで、あと半年を切った。
たまたま、久しぶりに覗いてみたら更新されていてラッキー!という気持ちです。仕事の都合でライジングには行けませんでしたが、そろそろボイガルの出番かなぁ〜とそわそわしながら、誰にも聞こえない声でボイガルの曲を口ずさんだりしていました。わたしが初めてライブハウスに足を踏み入れた日にもボイガルがいたなぁ、と思い出します。あの日からずっと、ボイガルの、ロックンロールの、虜です。zepp sapporoボイガルワンマン、楽しみにしています!
返信削除わ、ありがとうございます、更新したの21時前くらいだったのでめっちゃちょうどです。たくさんありがとうございます、これからもよろしくお願いします!
削除ボイガルが出演する時には、まだ行ったことのないライジングに行ってみよう、と決めていたのですが仕事の都合で断念。その日は一日中なんかソワソワしていたのを思い出しました。ボイガルがライジングに出演する姿を私も観たいです。必ず観に行きます。
返信削除シンゴさんの書く文章が大好きです。また気が向いたらブログ書いてくださいね。